安いインプラント治療は危険?
治療の費用相場や安く済ませる
方法も解説
2024/07/17
インプラントの治療費は高額なので、「できるだけ安く」とお考えの方も多いでしょう。ですが、相場に比べあまりにも安いインプラント治療には見えないリスクが隠れている可能性があり、安易に選択すると後悔することになりかねません。今回は、安いインプラント治療のリスクのほか、治療費を安く済ませる方法などについて解説していきます。
インプラントの治療費の相場は?
インプラントは自費治療なので歯科医院によって治療費は変わってきますが、相場はインプラント1本あたり35万円~50万円と言われています。この金額は治療費の総額であり、内訳は「検査・診断費用」「手術費用」「人工歯の費用」で構成されているのが一般的です。
検査・診断費用
インプラント治療に際しては、最初に検査・診断をおこないます。検査では、虫歯や歯周病の有無のほか、CTやレントゲンで顎の骨の状態や血管の位置などを確認します。検査結果をもとにインプラント治療の適否を判断し、治療計画を立案します。
手術費用
歯茎を切開し、顎の骨にインプラントを埋め込む手術をおこないます。顎の骨の厚みが足りず、そのままの状態ではインプラントを埋入できない場合は、骨を増やす治療が必要になることがあります。その場合は別途、骨を増やす治療の費用が加算されます。また、手術の際、眠ったような状態にする「静脈内鎮静法」という麻酔をおこなう場合も別途費用が加算されます。
人工歯の費用
インプラントの人工歯に使われる素材はセラミックが一般的ですが、セラミックにもいろいろな種類があり、種類によって費用が変わってきます。代表的なセラミック素材としては、ジルコニアセラミックやオールセラミック、ハイブリッドセラミックなどがあります。
インプラントの治療費が高い理由
インプラント治療の費用が高い理由としてよく言われるのが、以下のような点です。
インプラントそのもの(材料費)が高い
インプラント治療では、歯を失った部分の顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に「アバットメント」という接合パーツを装着し、アバットメントに人工歯を被せます。このように、一般的なインプラントは3つのパーツで構成されています。人工歯根の素材はチタン、アバットメントの素材はチタンやセラミック、人工歯の素材はセラミックが用いられるのが一般的です。それぞれのパーツが高品質かつ高価な素材でできているため、インプラントの治療費はどうしても高くなりがちです。
高度な技術力が求められる
昨今、インプラント治療をおこなう歯科医院が増えていますが、決して技術的に簡単な治療ではありません。一人ひとりの患者様によって異なる口腔内環境を把握したうえで、最適な位置・角度でインプラントを埋め込むためには、執刀する歯科医師に高度な技術力が求められます。この点も、インプラント治療の費用が高額になる要因の一つだと言えるでしょう。
保険が適用されない
インプラント治療は原則として保険が適用されず、治療費の全額が自己負担となります。治療を受けるためには、数十万という費用を用意する必要があります。なお、腫瘍、顎骨骨髄炎、外傷などによって、広範囲にわたって顎の骨が欠損している場合や、生まれつき、多数の歯が欠損している場合は、インプラント治療に保険が適用されます。
保険が適用されるインプラント治療については、以下の記事で詳しく解説しています。
▼関連リンク
インプラントは保険適用される?保険適用される条件や、治療費用を抑える方法を解説
設備投資にコストがかかる
安全・確実なインプラント治療を実現するためには、術前の検査と医院の衛生管理が重要なポイントになります。精度の高い検査をおこなうためにも、医院の衛生管理を徹底するためにも、充実した設備機器が不可欠です。このような設備投資には高額なコストがかかるため、それがインプラントの治療費にも反映されます。具体的には、以下のような設備機器が挙げられます。
・歯科用CT
インプラント治療では、人工歯根を埋め込む位置を誤ってしまうと、患部に麻痺やしびれが生じることがあります。このようなトラブルを避けるためには、事前の検査で顎の骨の状態や血管の位置を正しく把握しておく必要があります。そのときに欠かせないのが、口腔内の状態を3次元で把握できる歯科用CTです。
・インプラント専用のオペ室
クリーンな環境でインプラント手術をおこなうためには、インプラント専用のオペ室が不可欠です。専用のオペ室がない歯科医院でインプラント治療を受けると、細菌感染のリスクが高くなります。
・滅菌器
インプラント治療に用いる器具の滅菌が不十分なために、細菌感染が起こることがあります。治療器具に十分な滅菌処理をおこなうためには、高性能な滅菌器が必要です。
安いインプラントは危険?注意すべきポイント
昨今は「格安インプラント」「激安インプラント」といった歯科医院の広告が増えています。いくつかの歯医者を比較して、いちばん安いところでインプラント治療を受けようという方もいらっしゃると思いますが、安いインプラントには見えないリスクが潜んでいるものです。
安いインプラントの危険性
インプラント治療の相場は上述のとおり、1本あたり35万円~50万円です。にもかかわらず、1本あたり10万円程度でインプラント治療をおこなっている歯科医院もあります。ここまで金額に差があると、10万円のインプラントを選びたくなるかもしれませんが、金額だけで決めると後悔することになりかねません。相場に比べて極端に安いインプラントには、以下のようなリスクが潜んでいる可能性があります。
・粗悪なインプラントを使っている
粗悪なインプラントは安全性・確実性に欠け、術後にトラブルが起きたり、短期間でダメになったりする可能性があります。一般的にインプラントの寿命は10~15年と言われますが、粗悪なインプラントの場合はわずか1~2年でダメになってしまうケースもあります。
・総額表示をしていない
表示されている費用が人工歯根(インプラント)の費用だけで、検査費用や手術費用、人工歯の費用が含まれていないケースもあります。このような歯科医院でインプラント治療を受けると、後に高額な費用を請求されてトラブルに発展してしまうリスクがあります。
その他、人件費を削減するために経験の浅い歯科医師に執刀させたり、必要な設備を導入・使用しなかったりして、インプラント治療の費用を下げている歯科医院もあるようです。
安いインプラントを選ぶ際の注意点
安いインプラントを選ぶ際は、本当にその金額で、相場と同じクオリティの治療が受けられるのかを見極める必要があります。チェックすべきポイントは以下のとおりです。
・インプラントのメーカー
現在、世界では100種類以上ものインプラントが流通していますが、なかには品質の低い安価なインプラントもあります。世界の4大インプラントメーカーと言われているのが、「ストローマン」「ノーベルバイオケア」「ジンヴィ」「アストラテック」です。他院では聞いたことのないインプラントメーカーを取り扱っている歯科医院があったら、その医院は避けたほうが良いでしょう。
・インプラントの保証内容
インプラント治療には保証が付くのが一般的ですが、保証の条件や内容は歯科医院によって変わってきます。安いインプラントの場合は、保証期間が短く設定されていたり、保証内容が充実していなかったりすることがあります。
・治療費の総額
他院よりも安い料金表示をしていても、実はその料金は人工歯根(インプラント)のみの料金であり、検査費や手術費、人工歯の費用などが含まれていないパターンもあります。このように総額表示をしていない歯科医院もあるため、必ず治療費の総額と内訳を確認するようにしましょう。
インプラントの治療費を安くする方法
インプラントは治療費が高額になりがちですが、「医療費控除」の制度を使うことで所得税や住民税の負担を軽減できるケースがあります。医療費控除とは、一定以上の医療費を支払った場合に所得税・住民税の負担が軽減される制度です。インプラント治療などの歯科治療にかかる費用は通常、医療費控除の対象になります。
インプラント治療費の医療費控除については、以下の記事で詳しく解説しています。
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インプラントの医療費控除はいくら返ってくる?年収ごとの還付金ややり方を紹介!
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まとめ
「格安インプラント」「激安インプラント」といった広告にはついつい目が行きがちですが、インプラントは医療行為であるだけに、「安ければ安いほうが良い」と考えるのは危険です。相場に比べて著しく安価なインプラント治療にはリスクが潜んでいる可能性があります。後悔することのないよう、適正価格で安全・確実なインプラント治療を受けられる歯科医院を選んでいただきたいと思います。